Pandora 3

写真は「見た画像を残したい」から始まった
太陽の下、日焼けで水着の跡ができのるは紫外線が肌を変色させるため
そこで光による変色を固定させる化学薬品が研究された
さらにカメラの発明によりレンズを使って像を写すことができるようになった
フィルムから撮像素子になったがレンズは必要だ
カメラレンズはなぜ大きくて高価なのだろう?
温故知新 故 愛宕 通英 氏の文献より考察

レンズについて

虫眼鏡


レンズは断面で見てガラスの厚い方向に光線を曲げる

レンズの関係式

レンズを通すと被写体は逆さまに映る

レンズ

虫眼鏡で作られた像が周辺部のみならず中心部でもカメラレンズほど鮮鋭でないのは
球面に磨かれたレンズは理想的ではない
レンズの像が理想通りに結像せずに起こすボケや崩れを収差という

可視光線

直進性:(紫の方が直進する)
屈折率:(紫の方が屈折する)
回 折:(赤の方が回折する)

色収差と色の倍率誤差

球面収差

レンズの形

虫眼鏡の場合、被写体と像が等距離=入射角と出射角が対象形に屈折する場合が収差による影響が一番少ない
カメラレンズの場合、対物距離(D)は焦点距離(b)よりはるかに大きいので②か③の様な形状になる
④の非球面レンズは理想的に合焦できる

色収差と球面収差の修正

アポレンズは外周付近と光軸付近での光線の焦点を合せる事により他の光線も大体同じ所に焦点を結ぶ
また、非球面(アスフェリカル)レンズ1枚でも同様の補正ができレンズの明るさや軽量化に貢献する

コマ収差

非点収差

正確にはレンズの中心から放射方向にサジタル像/同心円方向でタンジェンシャル面と直交する面にメリジオナル像が結像
後述する“解像力”のMTF曲線で評価される

ディストーション

この収差も非球面レンズ(アスフェリカルレンズ)を使用することにより補正できレンズの明るさや軽量化に貢献する

像面湾曲

レンズに入る斜光線は光軸上の焦点面に焦点を結ばない
レンズの焦点距離が同じであることから考えると湾曲している
カメラレンズの焦点面は諸収差を修正されてもなお湾曲し複雑な曲面になっている
その平均面にセンサーが置かれている

光学ガラス

レンズの収差を補正するには屈折率の高いクラウン系と分散し易いフリント系に大別される
ガラスに透明性を害さない不純物を入れて性質を変えていた
光学ガラスの理想は透明だが残念ながらレンズは目で見える
光の吸収率は1950年代で厚さ10mmに対し2.4%あったらしいが技術の進歩で今は100mm厚で1.6%らしい
光が入射する境界とレンズから外に出る境界は数%の光の反射が起きる
レンズの構成枚数が増えると無視できない

コーティング

1904年デニス・テーラー(英)が風化したレンズの透過率が良い事を発見
1936年ジョン・D・ストロング(米:カリフォルニア工科大)が氷晶石やフッ化マグネシウム等を真空中でレンズ面に熱で付着させる
ガラスと空気の屈折率の隔差で反射するのだから中間的な屈折率のコーティング層を設けると層の前後で光波の粗密が打ち消され反射が軽減される理屈だそうだ
コーティング層の厚さにより有効な波長が変わる
単層コーティングでは全ての色域はカバーできない
波長の違う二重のコーティング層(アクロマチック)➝多層膜コーティング➝ナノクリスタルコートと進化(一部商品名)
レンズの構成枚数の増加による明るさの低下に寄与している
コーティング層は極薄なのでレンズの性能には全く害を与えないそうである

フレアー

コーティングで緩和された古典的なフレアー
1.太陽や電灯などの強い光がレンズ各面で内部反射して像面に達するカブリ
2.絞りの形がレンズ内の反射で写る
3.レンズの外周縁、レンズ枠、絞り羽根のエッジ、ボディ内部の乱反射されたカブリ

コーティングでは救済されないフレアー
4.レンズの残存収差が焦点のまわりにボケ(ハロ)を作る

レンズの構成

標準レンズ(フルサイズで焦点距離50mm位)の構成図である
非球面レンズも使っていないオールドレンズである
左は 4群6枚構成 のレンズである
複数のレンズを組合せたモジュールを群と呼ぶ
カメラレンズの構成枚数は光の反射と吸収の面から少ない方が良い

焦点距離

無限遠の光源にピントを合わせたレンズの位置から焦点までの光軸上の距離が焦点距離
カメラレンズは収差補正のためレンズが組合され長さがあるので主点を決める必要がある
複数のレンズを一枚の厚みのあるレンズとして等価させる
左図の光の経路を右図のように入射光とレンズから出る描写光のみを考える
図の第二主点から焦点までが焦点距離となる
一般的にレトロフォーカスや特殊なレンズ以外は第二主点付近に絞りがあるそうだ

F(Focal Ratio)ナンバー

光量は距離の2乗に反比例する
レンズの口径比=有効径E/焦点距離f
F値(ナンバー)=1/口径比
開放絞り時のFナンバーはレンズに表示され品名に含まれている事が多い
開放絞り時の有効径=焦点距離 の場合 F1 となる
絞りの面積を半分にすると F1.4(面積なので*√2)
さらに面積を半分にすると F2
さらに面積を半分にすると F2.8
さらに面積を半分にすると F4
さらに面積を半分にすると F5.6
さらに面積を半分にすると F8
さらに面積を半分にすると F11
さらに面積を半分にすると F16
さらに面積を半分にすると F22



と絞り値が決められている
絞り1段絞ると光量が半分になる
Fナンバーと有効径Eと焦点距離fの関係を整理すると
F=f/E
俗に大三元レンズは開放値F2.8で開放値F4の小三元レンズより2倍明るい

周辺光量

光量は光軸に平行な入射光ではレンズの円面積が最大限有効なので明るい
画面の周辺に像を作る斜光線はレンズの通過面積が少なく光量が減って暗くなる
距離の2乗に反比例する光量は斜光線ほど距離が長くなるため暗くなる
レンズを構成する鏡胴も周辺部を暗くする要因である
鏡胴の前後端によるケラレの周辺減光は開放絞りで顕著で絞り込むと緩和される

望遠レンズは画角が狭いので斜光線が減るため光量分布差が少ない
逆に大口径の広角レンズでは影響が大きい
一般にビネットと呼ばれる現象はフィルムではラチチュード(寛容度)でカバーしていたが
デジタルではプログラムで改善している

解像力

夜空の一つ星を撮影した場合、像はいくら拡大しても点であるのが理想である
実際にはレンズ収差が残存しているためボケた円になって描写される
光学レンズの解像度は絞りF値に関係する
分解能はレイリーの限界で理論値計算できるそうだ

カメラレンズは被写体のコントラスト再現性をMTF(Modulation Transfer Function)曲線(空間周波数特性表)として各社各様に公表されている
横軸にレンズの中心から周辺部へ、縦軸にコントラスト値(最高値=1)で一般的には開放F値でのグラフになっている
放射方向がS(サジタル)方向/同心円方向がM(メリジオナル)方向
10本/mm の曲線が1に近いほどコントラストが高くヌケの良いレンズ?メリハリがあってクリアな感じ
30本/mmの数値が高いほど高解像なレンズという目安(F値によって変化する)である

レンズにおける光の回折

光がホール(穴)を通過するとホールが点源となり球面状にが広がる(ホイヘンスの原理)
ホールが小さいほど回折は大きい
波長の長い方がより強く回折するので紫より赤の方がやや回折する
レンズの絞りを小さくすると収差には有効で被写界深度も深くなるが、絞り込み過ぎると絞りによる回折で鮮悦度が低下する(小絞りボケ)
このことから一般的に光学レンズの解像度は絞りF値“F8”位が良いとされている
ただし撮像素子の大きさと画素数、つまり解像度にも依存する
ーーー余談ーーー
開放F値の明るいレンズは不要か?
いいえ、F8に絞るとして開放F5.6のレンズと開放F1.4のレンズでは性能の余裕が違う
ピントを合わせるのはオートにしろマニュアルにしろ開放で行うのでピント精度が違う
一般に製品のトータルバランスを考えた場合、それなりの性能比であろう
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ピントを合わせる

カメラレンズは入射光が平行の場合∞であるが近距離になるとレンズを移動させて焦点距離を調節しなければ焦点が合わない

焦点深度

レンズと像面の距離を変化させても画像鮮鋭度が良好な範囲がある

被写界深度

ピントを合わせた被写体の前後も画像鮮鋭度の良好な範囲がある

望遠レンズほど、絞りを開くほど、被写体に近いほどボケやすい

カメラレンズの分類

標準レンズ

撮影画面の対角線に近似した焦点距離のレンズ
例えばライカ判(35mmフルサイズ)の対角線の長さは43mmなので焦点距離50mm〜40mmあたりである
一眼レフの場合レフレックスミラー可動域がある為、レンズの最後端から焦点までの距離(バックフォーカス)が広く焦点距離58mm位のレンズまで含めることもあった
一定の撮影距離では、焦点距離が短いほど像が小さくなり被写体に近づく傾向となり遠近感が誇張される
被写界深度もそこそこ深いので風景〜スナップ〜人物に適している標準たる所以である

長焦点レンズ

標準レンズと同構成だが画面対角に対し焦点距離を伸ばしたレンズ

望遠レンズ

標準、長焦点レンズは主点がレンズ系の中にあるのに対し
望遠レンズは主点をレンズ系の前方に出し焦点距離の長さに対し鏡胴を短くして携帯性や取り回し性を良くしたレンズ
ただし、絞りによる収差補正(ディストーション)が難しく明るいレンズが作りにくい

広角レンズ

広角レンズは主点からの画角(包括角度)がライカ判では焦点距離28mmで75度にもなり最も厄介な斜光線が多い
レンズの構成枚数を増やすと鏡胴が長くなり周辺光量不足となる
解像力重視でディストーションは大目にみる必要がある
一眼レフの場合、標準レンズでも問題になるバックフォーカスが必要である
ミラーレスカメラのフランジバック(レンズマウントから撮像素子までの距離)が薄くなっている要因の一つである
一般にレトロフォーカス(Retrofocus)とよばれるレンズ構成を使う
レトロは懐古的ではなく“後ろ”に焦点がある意味
望遠レンズの主点を前方に移動させた原理を逆に主点をレンズ系の後方に出した逆望遠と言われるレンズ

魚眼レンズ(Fisheye Lens)

広角レンズのレトロフォーカス形式で極端に画角を広くした

ズームレンズ

焦点距離連続変換可能レンズ?返って分かりづらい
スチルカメラ用に世界で初めて1959年ドイツのフォクトレンダー社(当時はホクトレンデルと書かれていた)から Zoomar 36-82mm F2.8が発売された
今では単焦点レンズの方がマニアックで、ズームレンズが一般的になった
レンズ設計はコンピューターの出現で劇的な発展をもたらしたそうだ
富士写真フイルムの“FUJIC”は1956年に日本発のコンピューターでレンズ設計を目的に開発されたそうだ
現在レンズは光学シミュレーションによる設計であるようだ
ズームレンズの発展もその恩恵であろう ズームレンズは便利な半面、レンズ構成が多く大きく重くなる
明るいレンズが作りにくいので開放絞りでも単焦点レンズの絞りを絞った状態になりボケにくい
刻々と暗くなる日没時はフェアではないですが単焦点レンズ後にズームレンズで撮影比較

単焦点レンズ<Nikkor50mmF1.8S>

ズームレンズ<AF-S Nikkor18〜55mmF3.5-5.6G>

ピント合わせ不要のカメラ(pan focus)

「写ルンです」というレンズ付きフイルムはパンフォーカスと言ってピント調節を省略したカメラであった
現像するまで写っているか分からないフイルムカメラは、誰でも簡単に失敗しにくい需要があったような
定焦点カメラ(固定焦点カメラ)は被写界深度を深くして一般的な撮影距離を焦点深度内に収める
今までの考察からレンズの有効径を小さく、焦点距離を短く、ボケの許容範囲を寛大にする
そこそこ綺麗に写っていて良かったねのレベル

ーーー余談ーーー
ボケが好きなのか?
フイルムカメラの時代は手振れ(シャッタースピードは1/焦点距離)と明るさ(F値)の兼合いで、結果論的に被写界深度が・・・って感じだったような
オートフォーカスの精度も上がりピンボケが少なくなって
スマホに追い上げられると画角と被写界深度によるボケが差別化になったのだろうか?
手振れ補正とISO感度を高感度にできる時代
綺麗なボケ、ボケ味、玉ボケ、ボケが・・・
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